ヌードデッサンという名の試練
松田聖子の「SWEET MEMORIES」が
ラジオから流れていた頃の切ないお話…
――二十歳の夏、忘れられない授業――
二十歳のとき、夜間のデザイン学校に通っていた
ある日、美術の授業が終わる間際、先生が淡々と告げた
「来週は、ヌードデッサンです」
その瞬間――
「ヒョエー!ヤッター!!」
男連中は、まるで祝日でも決まったかのようにバンザイ三唱、ガッツポーズの嵐!
早よ、来週ならんかなぁ?スキップで帰りましたよ🤩
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ニヒルな先生、くだらない冗談は一切通じない
この美術の先生、職業は画家
髪型は9.75対0.25分けくらい
外出時は必ずベレー帽着用
自分ではニヒルな二枚目を気取っているつもりらしい
こちらが冗談半分で茶化しても、まったく笑わない。
とにかくクソ真面目
聞いてみた
「バイトや仕事で遅れてもOK?」と聞くと
すると、間髪入れずに、
「モデルさんが嫌がるので
遅刻者は不参加扱いにします」
……屹然と言い切りよった
運命の当日、すべてが狂い始める
そして、その日が来た。
ところが運悪く、バイト先の広告代理店では担当社員が急病で「代わりにクライアントとの打合せに行ってほしい」と言われた
場所は滋賀県・八日市
「今日は何があっても、5時半には大阪に戻らなあきませんねん」
「そんな遅くならへんよ」
「それやったら行きますわ」
その言葉を信じて、行ったのが運の尽き
昼頃に現地に着くと、話が違うやん😮
打合せと聞いていたのに会議やん😟
延々と、どうでも良い内容が続く…最悪3時に終わらんと、
6時からのヌードデッサンに間にあわんがな
2時50分、まだ終わらん
そこへ、次の研究者風のオッサンが立ち上がる
「私の長年の課題であった……」
ゆっくりウニウニ、ゆっくり語り始めた
(早よしゃべれや、ジジイ!!)
……3時、過ぎた
会議を途中退席する二十歳
「もうあかん、限界や」
やにわに手を挙げる
「時間が来ましたので、都合で帰らしていただきます」
一同唖然
(もうええねん、後のことは明日考えよ)
そう心に決め、会議室を出た
いざ大阪へ!
名神ハイウェイバスに乗ったものの、京都あたりで大渋滞。
「これは大阪駅まで行ったら確実に遅刻や」
深草の高速バス停で降り、京阪電車へダッシュ
この時点で4時半過ぎ
「急げ、急げ」早く走れよ京阪電車
駅に降りるとダッシュ!
淀屋橋からタクシーに乗った
「しかしこの頃は…でんなぁ~」
のんびり走り運転手が世間話を始めた
もう15分しか無いがな
「おっちゃん、話はエエから早よ行って」
信号が黄色にかわっても
「イケル、イケル」
「高島屋の横は混むから通ったらアカン」
などと、後ろからヤイヤイ注文をつけ
(普段は絶対こういう事はしません💦運転手さんゴメンナサイ)
何とか6時ちょっと過ぎに日本橋の学校に着いた
教室に入った瞬間、おかしな空気
階段を駆け上がり、吐きそうになりながら、
「ヤッター!これは反則セーフやろ」
ガラッ。
教室に入った瞬間――
男どもの様子が明らかにおかしい
女子は一様に顔が赤い
「……?」
すると目の前を、革ジャンを羽織り、
下半身裸の痩せた男が横切った。
「何やコイツ?」
「そいつがモデルや!男のモデルや!!」
「エエッ!?どういうことや!」
疲労困憊した私の顔を見て、先生がヘヘヘと勝ち誇ったような一言!
「誰も女性モデルとは言ってませんよ!」
「それはないわ、あんまりやで」
バイトをクビ覚悟で帰って来て
全身汗みどろの落胆した私に向かって
「キーヒッヒヒ。ヒャヒャヒャヒャ」
「ハーハハハ。ウヒャウヒャウヒャ🤣」
鬼の首をとったようにバカ笑いしよった
これは確信犯やな
日頃のふざけた言動を恨んでいたんや
おまけにこの男のヌードモデル
「細い体に●●コが大きい~♬」の唄どおり、男連中のプライドを引き裂いてしまった
帰りは放心状態で「最悪やな」「ああ、気持ち悪~う」
と愚痴りながら居酒屋へ😩
一か月後、不幸再び!
一か月後。
「今度は絶対、女性モデルでんな!」
念押しして臨んだヌードデッサン
ジャーン
紺のガウンをまとったモデルさん登場
「ごくん」と、生唾を飲む音が聞こえた
だが、ガウンが妙にデカい
「それでは、始めま~す」
パッサ♪
脱いだ瞬間――
そこにあったのは、
八段腹の芋虫のような肢体。
確かにヌード
しかしこれでは……おばちゃんの女湯…😰(失礼しました)
先生曰く、
「ヌードデッサンは、美しさやセクシー度よりも、過剰豊満がええんです」😑
確かに有名絵画も皆、豊満な女性を描いている
青春は残酷
とはいえ、こちらは二十歳そこそこの男子
真っ赤な顔で、のぼせて退席する軟弱者もいた
ニットズボンの前を、画板で必死に押さえ込んでる奴😉
モデルさんを直視できず、足しか描かない奴もいる
モデルさんと目が合うと、こちらが何となく恥ずかしい🥵
「根性がちゃうな、裸の方が強いんや」
変な感心をしていました。
「どうしたんですか?
肝心な所、描いてませんやん」🤪🥵
「ホレホレ、何してるんですか!」
先生がおちょくりよる
アカン今回は反論できん。完敗や!😂
嗚呼、悲しいかな青春のサガ
とても勉強になった二十歳の夏
