もし日本が1990年以降に“安全保障産業(広義の軍需)”を育てていたら?──失われた150〜200兆円、IT復活、国家主権の再起動まで
日本は戦後一貫して「軍需産業」を封印してきた国だ。
しかし本当の問題は“軍需=兵器産業”ではない。
現代の軍需とは、AI・サイバー・暗号・衛星・宇宙・量子を含む
「安全保障産業(Security Industry)」そのもの。
もし日本が1990年からこの分野を育てていたら、
経済もITもエネルギーも、完全に別の国になっていた可能性がある。
本記事では、その“失われた可能性”を数字・制度・歴史から整理する。
■ 世界の安全保障マーケットは年間300兆円規模
軍事支出は世界全体で年間約300兆円。
これは兵器だけでなく、次のような分野を含む。
- サイバー防衛
- AI分析・自律兵器
- 量子通信・暗号技術
- 国産クラウド(国家クラウド)
- 半導体(軍事・宇宙仕様)
- 衛星コンステレーション
- 無人機・ロボティクス
- 監視・情報収集(Intelligence)
これらは「軍需の皮をかぶった巨大デジタル産業」。
アメリカは軍需で技術革新を生み、シリコンバレーができた。
一方で日本は戦後ずっと封印してきた。
■ 日本が“軍需輸出国”になっていた場合の試算(1990〜2025)
技術大国である日本は、本来ドイツ・フランス級の軍需輸出国になれるポテンシャルがあった。
これをベースに試算すると、
- 輸出:年間 1〜3兆円
- 平均 2兆円 × 35年=70兆円
- 波及効果:100兆円規模
つまり軍需輸出だけで100兆円前後の経済インパクトがあった可能性が高い。
■ 国内調達も国産化していたら?(追加50〜70兆円)
日本は長らくGDP比1%以下の防衛費。
これを1.5〜2%に上げ、国産化していた場合、
- 追加1.5〜2兆円/年が国内企業へ
- 35年で 52〜70兆円の経済効果
輸出と合算すると、
→ 総計150〜200兆円またはそれ以上の経済効果
これは「失われた30年」を丸ごと埋める規模。
■ だが本当に大きいのは“情報・サイバー・宇宙”の軍需
もし日本が軍需の封印をしていなければ、
IT産業の未来も大きく変わっていた。
● 日本が失った可能性
- 国産クラウドがAWS・Azureと競争できた可能性
- 国産OSが消えず、国家基盤化
- 半導体の衰退は起こらなかった可能性
- 宇宙技術が“防衛需要”で巨大化していた
- サイバーセキュリティ市場で世界を狙えた
これらはすべて「軍需=技術投資」がなかったことで弱体化した分野である。
■ では、なぜ日本は軍需・安全保障産業を育てられなかったのか?
理由は 3 つ。しかも“国家構造そのもの”に埋め込まれている。
① 日本国憲法(第9条)
戦争放棄は理念として立派だが、
実際には「軍事=悪」という価値観を国家に固定した。
- 大学で軍事研究が禁止
- 企業も軍需開発を避ける
- 防衛装備が“縮小産業化”
- IT・宇宙・AIの“軍事転用”を封印
結果、日本の最先端技術が民生専用となり、国家戦略産業になれなかった。
② 日米地位協定
日本の安全保障の根幹だが、
その裏で“軍事主導権をアメリカに握らせる仕組み”を固定した。
- 国産兵器より米国製が優先される構造
- 衛星・宇宙技術の上流を握れない
- 情報インフラを完全に自前化できない
- 軍需産業が育つ前に潰れる
つまり、日本は「安全保障のデザイン権」を持てない国として固定されてきた。
③ 非核三原則
平和的に聞こえるが、実際には:
- 核技術の研究が封印
- 核融合・核材料分野で出遅れ
- 外交カードを永久に失う
- 抑止力がゼロ → 米軍依存が強まる
結果として、軍需・宇宙・量子・エネルギーにも影響。
日本は「核関連の先端産業」を持てない国として固定された。
■ 高市内閣の「日本を取り戻す」「経済再生」の真意
高市早苗首相は、経済発展の“国家基盤”を重視している。
キーワード:
- 日本を取り戻す
- 日本経済再生の途をつける
これは単なる保守スローガンではなく、裏側の意味は…。
● 経済安保の強化
● サイバー防衛隊の拡充
● 宇宙・衛星防衛網
● 国産クラウド・純国産サーバー
● 半導体(防衛仕様)
● データ主権の回復
● 無人機・AI・量子技術
つまり、
「安全保障産業を国家戦略として再構築する」
ということ。
これこそが「日本を取り戻す」の本当の意味であるように思う。
「経済再生の途」はこの産業の再起動そのものだ。
■ まとめ|日本は軍需を封印したまま先進国を続けてきた、世界でも稀な国
- 軍需を育てていれば150〜200兆円規模の経済効果があった
- IT・宇宙・AIも“軍需投資”で世界最先端になれた可能性
- しかし憲法・地位協定・非核三原則が構造的に妨げた
- 高市内閣は、この封印を部分的に開こうとしているのでは
軍事=戦争ではない。
安全保障産業=国家の生命線であり、成長産業そのもの。
日本の安全保障産業を守り育てるには、価値観を共有できない国家・組織による影響を排除し、あわせて先端技術と機密情報を保全する法制度――とりわけスパイ防止法や安全保障クリアランス制度の整備が不可欠である。これは、国際社会の標準から見ても当然の要請である。
大変な道のりだが…
ようやく日本がそれに着手し始めたのかもしれない。
